看取り看護を経験する前に知っておきたい患者さんの身体と精神の変化

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看取り看護を経験する前に知っておきたい患者さんの身体と精神の変化

看取り看護とは、近い将来、死に至ることが予見される方に対し、その身体的・精神的苦痛、苦悩をできるだけ緩和し、死に至るまでの期間、その方なりに充実して、納得して生き抜くことができるように、日々の暮らしを営めることを目的として援助することです。

看取り看護における重要なことは、住み慣れた自宅や施設などの、ご家族や医療スタッフ、介護スタッフの共にその人らしく過ごせるように、いかに支援することが大事になります。看取り看護をする上で最も大事になることは、やはりその方のニーズを知ることです。そして身体的・精神的な変化を知ることが大事になります。その過程を今回はまとめました。日々の仕事で看取りに関して悩まれている方の参考になれば幸いです。

1 看取り看護とは?それはご本人やご家族の想いやニーズを明確にすること!

看取り看護とは、近い将来、死に至ることが予見される方に対し、その身体的・精神的苦痛、苦悩をできるだけ緩和し、死に至るまでの期間、その方なりに充実して納得して生き抜くことができるように、日々の暮らしを営めることを目的として援助することになります。対象者の尊厳に十分配慮しながら介護・看護することを指します。

何よりも、重要になることはご本人やご家族の想いやニーズを明確にすることです。できるかできないかは関係なく、目的や目標を定めることが重要になります。その上で、できることからご希望に応えていくことを大切にしています。一番の不安は病気に対して知らないことが多く、この先どうなっていくのかという不安があるので、その不安の解消をしていきます。痛みを抱えていらっしゃる方には「痛みは我慢しなくて良いんですよ」と伝えることが必要です。眠れない場合には、先生にお願いして薬でコントロールしたり、マッサージしたり体を温めてあげたりし、ご本人様が望まれるリラックスできるケアを行います。何が看護として必要か、大事かではなくご本人様の想いやニーズに対して実践できることを1番とします。

2 看取り看護における身体的・精神的変化とは?

看取り看護を行う上で、どのような変化が起きるかが、看護や介護する側の大きな悩みでもあり、知るべきポイントでもあります。「人にはいつか死が訪れる」という心づもりを持つことで、現実の死の過程を直視することができ、どんな看護ができるかがイメージつきます。一つずつ時系列でみてみましょう。

2-1 余命半年~2か月程度の場合は個人差がかなりあります

この期間では個人差がありますが、食事量・水分量が減少したり、不眠や不安などの問題、痛みや倦怠感の出現などが主に見られます。それぞれの症状などを把握しましょう。

2-1-1 食事や水分量はどうしても減ってしまいます

病状が進んでくると、食事量や水分量が減少してきます。決して食事が摂れないから病気が進むわけではありません。家族が看護をする中でどうしても、「食べてほしい」「元気になってほしい」という想いから食べさせようと躍起になってしまいがちです。少量でも栄養が摂れる栄養補助食品の使用や、ご本人様が好きな食べ物を用意したり、ご家族で一緒に食べる空間を作るようにしましょう。

2-1-2 不眠や不安はまずは話を聞いてあげましょう

不眠の原因には痛みや身体の変化による不安、あるいは飲んでいる薬が原因のことが多くあります。病気や加齢に伴う体力の低下を身体のだるさと感じることがほとんどです。日によって変化があり身体のだるさが強い時と弱い時があります。ここで一番大事なことは不安な気持ちを聞いてあげることです。そして日によって変化があることを理解して、だるさが強い時に無理をさせないことが大事になります。体力を減らさないようにと無理に動くことを進めがちですが、だるさが改善しない要因になってしまうため、ご本人のペースを尊重するようにしましょう。あまりに眠れない日は、主治医に相談して睡眠薬の処方を検討しましょう。

2-1-3 我慢してはいけない痛み

病気によるものや、動きが制限されることから痛みの出現は少なからずあります。看護する側は痛む場所や時間帯を把握するようにしてください。原因によって処方する痛み止めが変わるためです。それ以外には家族と時間を過ごしたり、一緒に趣味の時間を楽しむなど、痛みを忘れられるようにしましょう。温罨法やマッサージなどが効く方もいますので、主治医に相談しながら解消できるようにしましょう。

2-2 余命2ヶ月~2週間程度の場合は急な変化があるので注意

この期間は急な変化がみられたり、想像しないことが起きることがあります。病気や余命が短いことから生じることなので、しっかりイメージして看護するようにしましょう。

2-2-1 食事や水分は摂れなくなることが多くなります

食事を摂ることは実は非常に体力が必要なことになります。この時期には食事を十分に摂取することが困難になります。食事や水分などを摂取できても、むせやすくなるため、提供するのも怖くなる場合もあります。本人のペースに合わせて行うようにしましょう。中には拒否する方もいらっしゃるので、口を拭うだけや小さい氷だけ、あるいはアイスクリームなど食べやすいものを選択しましょう。うがいや口をゆすぐだけでも気分転換になります。

2-2-2 食事や水分が減ることで尿が出なかったり便も出にくくなります

食事・水分が取れないことや、心臓や腎臓の機能も低下することで尿量が少なくなってきます。また、感覚が鈍くなることや動くことが困難となり、失禁してしまうことが多くなります。尿や便の量をメモして主治医に報告するようにしてください。オムツの使用などで自尊心が傷つくことがありますので、声掛けは注意するようにしましょう。

2-2-3 つじつまが合わないことを言うこともあります

酸素が少なくなり、肝臓や腎臓の働きが悪くなって、有毒な物質が排泄されなくなり、脳が眠るような状態になることで、つじつまの合わないことを言う、手足を動かすなど落ち着かなくなることがあります。興奮状態に陥る場合もあるので、その際は主治医に処方をお願いして対応するようにしましょう。もし声掛けなどに困れば、普段通りに声をかけたり、静かに足をマッサージしたり、ただ部屋の中で、ご家族がお話されている声が聞こえているだけでも、ご本人様はホッとされることが多いです。無理をしない範囲で看護するようにしましょう。

2-3 余命1週間前後は2割は急に亡くなります

だんだんと眠っている時間が長くなっていきます。夢と現実をいったりきたりするような状態になることが多くなります。話しておきたいことは、先送りせず、今の時期を大事にして伝えておくのが大事です。80%以上の方がゆっくりとこの状態になりますが、一部の方は一気に亡くなるケースがあるので、やり残しを後悔しないように「今」を意識して看護していきましょう。

2-4 余命2日~数時間は寝ていることが多い

周囲に対する関心がなくなり、うとうとと寝ていることが多くなりますが、名前を呼ぶと目を開けるなど反応があります。ただ、開眼しても、見えなくなります。音や声は、最期まで聞こえていますが、口が乾燥し、言葉が出にくく、応える力がなくなり、意識がないようにみえることが多くなります。音は最期まで聞こえるので可能な限り声をかけてください。発熱されることがあるので、主治医に相談して坐薬や氷枕などで調整してあげましょう。口腔内が臭うこともあるので、ケアやガーゼなどで拭いてあげるほうがいいです。また血圧が下がるために、手足が冷たくなり、手足の色が紫色になり、斑点がみられることがあります。体が弱ると眠りが深くなり、唾液をうまく飲み込めなくなるために喉がゴロゴロと音を立てることがありますが、自然の変化です。苦痛があれば吸引をしてあげましょう。

2-5 最期の刻は呼吸状態に注目

呼吸のリズムが不規則になり、息をすると同時に肩や顎が動くようになります。次の呼吸が始まるまで1分以上かかることがあり、呼んでもさすっても反応がなく、ほとんど動かなくなります。徐々に呼吸が止まり、胸や顎の動きがなくなります。脈が触れなくなり、心臓が止まります。この際にはご家族も集まっているので、声をかけながら最期の時間を過ごしましょう。死亡診断は主治医が実施するので、呼吸が止まれば医師に連絡をするようにしましょう。

3 看取り看護の実際はまだメインは病院

看取り看護の方法を2章でお伝えしましたが、実際看取りは世界的に見ると病院が最も多い状況です。日本においても、死亡場所も地域包括ケアと言われている中で病院が最も多い状況です。

3-1 諸外国と比べる、日本での看取りはメインは病院

日本は世界にも類を見ない高齢者大国であります。多くの高齢者を抱えている状況で年間120万人以上が亡くなっています。しかし、最期を迎える場所は80%以上が病院になっています。看取りをするうえで選択できることが大事ではありますが、まだまだ病院で亡くなることが当たり前の状況が日本にはあります。福祉国家と言われるスウェーデンでは、看取られる場所の選択することが可能で、自宅やナーシングケア付き住宅での最期も可能です。これは看取りの仕組みや考え方によるもので、日本では看取り看護に消極的だったりイメージが低い為、まだまだ広まり切れず病院任せになっている現状があります。

出典:厚生労働省ホームページ<医療と介護の連携に関する意見交換(第1回)議事次第

3-2 死亡場所は徐々に施設も増えてはきています

死亡場所の推移を見てみると1950年代は自宅がメインで病院が少数なのがわかります。しかし1970年代より徐々に病院と自宅の割合が逆転していることがわかります。また1990年代から老人ホームでの看取りが増えてきているのがわかります。2000年に介護保険法の施行などを受けて、国の方針も病院から施設、在宅へシフトしていることがわかります。

死亡場所年次推移

出典:厚生労働省ホームページ<医療と介護の連携に関する意見交換(第1回)議事次第

4 看取り看護は基本的に在宅や施設を指します!

看取り看護、ターミナルケアとは、余命が残り数週間から数カ月になった人に対する終末期の医療や看護、介護を指します。看取り看護は自宅や施設で看護・介護を中心に行われ、ターミナルケアは医療現場で痛みを抑える緩和ケアを中心に行われます。いずれも、最期を迎える人に対して、精神的・身体的な苦痛を軽減して一人ひとりが自分らしい最期を自然に迎えられる目的で行われます。近年、医療技術の発達で寝たきりで意識が戻らなくても行われる延命治療や高齢者の意思を無視して行われる医療に対して、自分の意思を尊重した医療行為や最期を迎えたいと考えている人が多くなっています。今後、看取りケア(施設)・ターミナルケア(医療現場)がどう行われるかがますます重要になっていきます。

5 まとめ

看取り看護と聞くと看護師が行うもの、難しそう、大変そうというイメージが先行します。実際一番大事になるのは「傍に寄り添うこと」そして、ご本人や家族含めた意向が最も重要になっています。まだまだ病院での看取りが通例ではありますが、この超高齢社会の実情では、様々な看取り方が必要になります。自分の大事な方をどのように看取るのか、逆に自身もどのように看取られたいかを考えるきっかけになれば幸いです。