グリーフケアの効果、具体的ケア、プロセスを徹底解説

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グリーフケアの効果、具体的ケア、プロセスを徹底解説

大切な方を亡くすということは、大変悲しいことです。

大切に思っていた方であればあるほど、大きく、深い悲しみがこみ上げてきます。

なかなか悲しみから立ち直れず、悩まれている方も多いのではないでしょうか。

日本グリーフケア協会会長の宮林先生の研究によれば、亡くなった人が親の場合は3年、配偶者ならば4年半〜5年、子どもならば5年ぐらい回復に時間がかかるそうです。

この記事をご覧いただいているということは、その悩みを解決する方法として『グリーフケア』という言葉を知って、もっと詳しく知りたいと思っているのではないでしょうか。

グリーフケアとは、遺族に寄り添って、正常な悲しみと立ち直りのプロセスを歩み、再び日常生活に適応できるように援助することです。

グリーフケアは、「自分は今その状態だから仕方がない」と、自分を許せるようになることが大事なのです。

焦らず、ゆっくりと進めていくべきグリーフケアについて、悲嘆のプロセスやどのようなケアをすればいいのかなどについて紹介します。

1 グリーフケアとは正常な悲しみと立ち直りのプロセスである

グリーフケアとは、「遺族に寄り添って、正常な悲しみと立ち直りのプロセスを歩み、再び日常生活に適応できるように援助すること」です。

「グリーフ(Grief)」とは、悲嘆を意味します。

人は生きている限り、「愛する人を失う」という大きな悲しみを経験します。そして、大きな喪失感を感じながらも、死という大きな悲しみを乗り越えようと努力する方向に向かいます。

大きな喪失感と、死を乗り越えようとする二つの間で揺れ動き、精神的にも身体的にも不安定で違和感のある状態を経験することになるのです。

グリーフの状態で生じやすい反応は大きく3つに区分されます。

  • 心(精神)的な反応

  • 身体的な反応

  • 日常生活や行動の変化

 

それぞれ、具体的な反応・変化の例を見ていきましょう。

・心(精神)的な反応

長期にわたる、「思慕」の情を核に、感情のマヒ、怒り、恐怖に似た不安を感じる、孤独、寂しさ、やるせなさ、罪悪感、自責感、無力感など

・身体的な反応

睡眠障害、食欲障害、体力の低下、健康観の低下、疲労感、頭痛、肩こり、めまい、動悸、医療不調、便秘、下痢、血圧の上昇、白髪の急増を感じる、自律神経失調症、体重減少、免疫機能の低下など

・日常生活や行動の変化

ぼんやりする、涙があふれてくる、多くの「なぜ」「どうしよう」の答えを求められ、死別をきっかけとした反応性の「うつ」によりひきこもる、落ち着きがなくなる、より動き回って仕事をしようとするなど

 

(引用:日本グリーフケア協会 グリーフケアとは

これらの症状が出現する期間は、人によって大きく異なります。

紹介したような「グリーフ」の状態にある人に、寄り添って援助することを「グリーフケア」といいます。

2 グリーフケアの必要性と効果

予防医学の観点から、グリーフケアは必要と考えることができます。

グリーフの状態は決して『健康状態』とは言えません。

健康でない状態が続くことで、さらに他の症状が出現する可能性が考えられますし、うまく悲嘆のプロセスを歩むことができなければ、重篤な健康障害等を引き起こすかもしれないからです。

WHOは、健康の定義を「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」としています。(参照:日本WHO協会 健康の定義について

先ほど、グリーフの状態で生じやすい反応を紹介しましたが、健康の定義からわかるように、グリーフの状態は決して「健康」ではありません。また、大切な人の死は、重篤な健康障害や自殺などを引き起こす原因になるといわれています。

では、グリーフケアを行うことで、遺族側と看護側それぞれにどのような効果が期待できるのでしょうか。それぞれの効果を紹介します。

2-1 遺族側の効果

遺族側の5つの効果
  1. 「大切な人の死」という、大きな悲しみを和らげることができる
  2. 悲嘆のプロセスの段階を踏むことができる
  3. 安心感を得ることにつながる
  4. 死別の影響による身体的・精神的な不調を予防することができる
  5. 看護師が介入することで、悲嘆が再燃したり不快な思いをするなど、逆効果となることもある

2-2 看護師側の効果

 

看護側の4つの効果
  1. 自分の看護を振り返り、看護師として成長することができる
  2. 看護師間で共有することで、他の看護師も成長することができる
  3. ほかの患者様との関わり方に変化をもたらす
  4. 自分自身がショックを受けてしまう可能性も考えられる

 

3 グリーフケアを受ける判断基準とケアの事例

グリーフケアを受けるか否かを判断するのは難しいので、チェックリストを用意しました。

筆者は、下記チェックリストのうち、段階①~⑨に1つでもチェックがつく方はグリーフケアをおすすめします。

3-1 グリーフケアの必要性を判断するチェックリスト

大切なことは、現状の自分の段階を把握することです。

チェック 悲嘆の段階 症状
①精神的打撃とマヒ状態 死が急激であればあるほど、ショックが大きく、一時的に現実感覚がマヒ状態になります。心身のショックを、少しでも和らげるための本能的な防衛機制と考えられています。
②否認 感情的に死を受け入れることができないだけでなく、相手の死という事実も否定しようとします。「あの人が死ぬはずない」、「元気な姿で帰ってくるはず」など、死んでいないと思い込んでしまいます。
③パニック 死に直面した恐怖により、極度のパニック状態に陥ることがあります。
④怒りと不当感 悲しみと同時に、「不当な苦しみを負わされた」という、激しい怒りが生じます。
特に突然の死のあとは、この感情が強くあらわれる傾向にあります。交通事故の場合、加害者に対する怒りが強くなり、入院中の死の場合は医師や看護師に怒りが向かうことも多いです。
⑤敵意と恨み やり場のない感情を、周囲の人や亡くなった方にぶつけてしまいます。
入院中の死の場合、最後までそばにいた医療関係者が敵意と恨みの対象となることが多いです。本人の不注意や不摂生が死の原因となった場合、感情が亡くなった方に向くこともあります。
⑥罪意識 自分の過去の行いを悔やむ段階です。「もっとしっかり向き合えばよかった」など、後悔の念にさいなまれやすくなります。
⑦空想形成、幻想 亡くなった人が生きているように思いこみ、生活の中でもなくなった人が生きているかのようにふるまいます。
子供がいつ帰ってきてもいいようにおもちゃを用意しておく、夫の好物を用意しておくなどがあります。
⑧孤独感と抑うつ 亡くなった後の慌ただしさがひと段落し、紛らわしようのない寂しさが迫ってくる段階です。とても大切なプロセスで、だれもがとおる悲嘆のプロセスのうちの一つです。
気分が落ち込んで何もする気が起きない、周囲の目を避けるなどの症状が出現する場合があります。
⑨精神的混乱と無関心 大切な人を失った虚無感により、目標を見出すことができなくなる時期です。これから先、何をしなければならないのかわっからない状態に陥りやすくなります。
➉あきらめ 「大切な人は、もうこの世にはいない」という現実を見て、大切な人の死を受け入れようとする努力が始まる段階です。
⑪新しい希望 新しい生活への一歩を踏み出そうとする段階です。亡くなった人を生活から切り離して考えることができるようになります。
⑫立ち直り 悲しみを乗り越え、新しいアイデンティティを確立する段階です。

上記チェックリストは、哲学者アルフォンス・デーケンの悲嘆のプロセス12段階を基にしています。

全員がこの12段階のプロセスすべてを、必ずしも経験するとは限りません。また、プロセスの順序も順番通りではありませんし、同時に複数の段階を経験することもあります。一時的に前の段階へ戻ってしまうこともあります。

しかし、それは一時的なものですし、振出しに戻ることはありません。もし前の段階に戻ってしまったとしても、次第に次の段階に進むことができ、プロセスを終了することができます。

数か月程度で立ち直ることができる方もいれば、中には5年以上かかる方もいるようです。また、様々な症状が出現しますが、症状がどれくらい強くなればグリーフケアが必要ということが決まっているわけではありません。そのこともしっかり理解しておくと良いでしょう。

3-2 グリーフケアの事例

グリーフケアはどのような内容になるのでしょうか。事例と良い例、悪い例のケア内容を紹介しますので、参考にしてください。

事例①:悲嘆のプロセス⑥『罪意識』の事例

父親を病気で亡くしたAさん。「もっと早く、病院に行くように説得すればよかった。もっと早く病院を受診していれば、もっと長生きできていたかもしれないのに」と話されている。
良いケアの例
Aさんの思いをしっかり傾聴する。時折、「そうなんですね」「そうですね」などの、相手を否定しない相槌を打つ程度にとどめ、Aさんが自分の思いを表出することができるように援助する。
悪いケアの例
「後悔しないでください」「私もAさんと同じ状況になったら、後悔すると思います」など、自分の価値観を押し付け、相手の話を遮断するように相槌を打つ。

事例②:悲嘆のプロセス⑧『孤独感と抑うつ』の事例

交通事故で母親を亡くしたBさん。食事や睡眠を十分にとることができず、ずっと涙を流している状態。
良いケアの例
Bさんに「眠れていますか?」「食事はとれていますか?」など、相手を気遣うように声をかけ、そばに寄り添う。Bさんから思いを聞くことができれば、しっかりと傾聴し、悲しみや苦しみなどの思いを受け止める。
悪いケアの例
「泣いてばかりいてはいけませんよ」など、悲しむことが悪いと認識させるような発言をする。「しっかり食事をとって、早く元気になりましょう」「寝ると気持ちが落ち着いて、早く立ち直ることができますよ」など、相手の悲しみを無視する発言をする。

4 グリーフケアを受けるまでの流れ

グリーフケアの受け方はいくつか方法があります。

4-1 悲嘆回復ワークショップへ参加する

日本グリーフケア協会が主催する、ワークショップ型のグリーフケアです。申し込みはこちらのページ(参照:悲嘆回復ワークショップ)から可能です。

4-2 専門家へ依頼する

京都グリーフケア協会は個人カウンセリングやご家族同席可能なペアでのカウンセリングを行っています。(参照:京都グリーフケア協会)料金体系は以下の通りです。

料金体系

・個人カウンセリング60分:8,500円
・個人カウンセリング90分:12,000円
・ペア料金60分:12,000円
・ペア料金90分:15,000円

申し込みは協会のホームページから行います。

4-3 その他インターネットで検索する

上述した2つ以外にも、グリーフケアを受けるにあたっては、インターネットで検索することをおすすめします。

特に、『グリーフ 料金』のキーワード検索が最適です。上述した2つの方法についてもこの検索でヒットします。

いくつかグリーフケアを行っている団体や会社のサイトが検索結果として表示され、『料金』と検索していることもあり、料金比較もできます。

その他、『グリーフケア』や『グリーフカウンセリング』といったキーワードで検索すると、医療職側の資格や協会についてが検索結果として表示されてしまいます。

5 グリーフケアで1番重要なこと

遺族の方にとってなにより重要なことは、悲しみなどの感情をうまく表現することです。

中には、「悲しさを紛らわすために」と、飲酒や喫煙、睡眠薬などの依存性の高いものに頼る方もいます。

しかし、これらに頼らなくても、悲嘆のプロセスを歩むことで、少しずつ悲しみを癒すことができます。

中には、うまく悲しみを表現できない方もいます。

言葉で悲しみを十分に表現できない場合は、自分の思いを思いつくまま、文章にしてみてはいかがでしょうか。

そして、文章にした内容を口に出すことで、言葉としても悲しみを表出できるようになります。

多くの方は自分の思いを文章にすることをやっていません。是非一度試していただきたいと思います。

また、涙を流すだけでも、悲しみを癒すことができるといわれています。悲しみをうまく言葉や文章にできない方は、しっかりと涙を流すところから始めてみると良いでしょう。

なお、看護師として、グリーフケアを行う際に1番重要なことは、看護師は、遺族の方が悲しみや苦しみ、寂しさなどの感情を表現しやすいよう、共感し自身の価値観を押し付けないことが何より重要なことです。

6 まとめ

いかがでしたか?グリーフケアとは何か、悲嘆のプロセス、どのようなケアをすればいいのか、などについて紹介しました。

グリーフケアは日本ではあまり浸透していないため、医療関係者の方でも意味をしっかり理解できていない場合が多いです。まずは、「遺族に寄り添って、正常な悲しみと立ち直りのプロセスを歩み、再び日常生活に適応できるように援助すること」という、グリーフケアの正しい意味を把握するようにしましょう。

グリーフケアの基本は、共感・寄り添い・癒しです。また、グリーフケアで重要なポイントは、遺族側は「自由な感情表現をすること」、看護師側は「遺族に共感して自身の価値観を押し付けないこと」です。

以上を念頭において、適切なケアができるようにしましょう。

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