訪問看護指示書の基礎知識を事例とともに丁寧に1つにまとめました

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訪問看護指示書の基礎知識を事例とともに丁寧に1つにまとめました

医療業界は病院から在宅へのシフトが始まり、訪問看護の注目度が日に日に増しています。訪問看護は、医師の発行する訪問看護指示書から始まります。この指示書が無ければ看護師は保険での訪問看護を行うことができません。

訪問看護指示書とは、在宅療養している患者さんに対して主治医が訪問看護を必要と判断した際に、患者が選定する訪問看護ステーションに対し交付するものです。

病院では直接医師から看護師に指示する内容について、看護師が1人で訪問するという訪問看護の特殊性から、指示書という文書の形で指示するものです。

訪問看護師が看護を提供する際には「指示書に記載されている指示を守る」ことが何よりも大事なことです。そのため、特に今後訪問看護で働くことも視野に入れている方は必見です。

訪問看護師として働くためには、看護師としての知識やスキルが大切であるとともに、訪問看護を利用している利用者に看護を提供する上で「訪問看護指示書」をしっかり理解しておく必要があります。

看護学生時代に訪問看護指示書について学ぶ機会があったと思います。しかし、病院で勤務をしていると、訪問看護指示書を目にする機会はあまりありません。そのため、訪問看護指示書に関する知識が乏しいまま、訪問看護師になる方もいるでしょう。

訪問看護師として働く際に必要な、訪問看護指示書の種類や注意点、訪問看護を行う際に大事なことなどについて、訪問看護の仕事に興味のある方は、是非参考にしてください。

1 訪問看護指示書とは~指示書の種類・対象保険・指示期間~

病院で勤務する場合、利用者さんの状態に変化があった場合や新たな指示を出してほしい場合、すぐ近くに医師がいます。そのため、気軽に相談し、指示を出してもらうことができます。しかし、訪問看護は利用される方のお宅で看護を提供するため、直ぐに主治医に指示を仰ぐことができませんそのため、事前に訪問看護指示書をしっかり読み込んで準備しておくことが必要です。

利用者によっては、複数の訪問看護ステーションに訪問看護を依頼しており、それぞれの訪問看護ステーションに違う内容の指示書が交付されています。しかし、利用者の中にはどこの訪問看護ステーションで交付されている指示書か混同してしまい、違う訪問看護ステーションに交付されている指示書の業務を依頼してくることがあるかもしれません。その場合、自分が勤務している訪問看護ステーションに交付されている指示書の内容を伝え、その業務を行うことができない旨をきちんと説明しましょう。

また、指示書に記載されている期間のみ、訪問看護を行うことができます。そのため、指示書にない期間に関しても訪問看護を行うことができませんので、指示書に記載されている内容を守ることと同時に、指示されている期間の確認もしっかり行うようにしましょう。

訪問看護指示書は、用途によっていくつか種類があります。また、訪問看護指示書は、一度交付されたからといって、長期間継続して同じものを使用できるわけではありません。定期的に医師が交付する必要があります。

訪問看護指示書に関して、種類や対象の保険などをまとめたフローチャートは以下の通りです。
訪問看護 指示書 適用フロー
※参照:日本訪問看護財団 厚生労働大臣が定める疾病等について

以下にてその詳細を解説します。

1-1 最も触れる機会が多い訪問看護指示書

一般的に使用される指示書です。指示書作成日は特に指定はありません。2か所以上の訪問看護ステーションで訪問看護サービスを受ける場合、それぞれの訪問看護ステーションが入手する必要があります。

有効期間は最長6ヶ月間ですが、その最中に症状や状態が変化して指示書の内容が合わなくなった場合、再度主治医に訪問看護指示書を書き直してもらう必要があります。

制度上のポイント

有効期間:最長6か月有効。日付の記載がない場合は1ヶ月間のみ有効。
保険:介護保険・医療保険共通

以下に全国保険医団体連合会が公表している様式を記載します。
訪問看護指示書
※出典:全国保険医団体連合会

【訪問看護師が見るべきポイント~事例~】

①適用する保険の種類を間違える事例

訪問看護指示書を見てよく間違える事例として、『主たる病証明』に「肺がん」と記載があるか「肺がん末期」と記載があるかで適用される保険を間違えるということが良くあります。

答えは「肺がん」であれば介護保険が適用され、「肺がん末期」であれば医療保険が適用されます。末期がついているかついていないかがポイントです。

②リハビリのための訪問をして良いかどうかの把握

訪問看護では、看護職員がアセスメントする事を前提に、理学療法士等のリハビリ職員とが連携・協働のもとで利用者の在宅療養を継続的に支援する目的で訪問することがあります。

主治医が訪問看護の一環でリハビリ職の訪問指示を出す場合、訪問看護指示書上の留意事項リハビリテーションに『〇』を記載します。見落とすことが時々あるのですが、この『〇』が無ければリハビリ職員の訪問に根拠がなくなってしまいますので、しっかり確認しましょう。

1-2 重度の状態にある場合に交付される特別訪問看護指示書

退院直後や急性増悪期、退院直後で、頻回の訪問看護が必要な場合に交付される指示書です。原則として月に1度のみの交付ですが、気管カニューレを使用している状態にある者・真皮を超える褥瘡の状態にある者に関しては、月に2回まで交付可能です。

いきなり特別訪問看護指示書のみが交付されることはありません。特別訪問看護指示書による訪問看護は、訪問看護指示書とともに出されてます。

もともと主病名から介護保険の対象となる疾患でも、特別訪問看護指示書が出ている期間は医療保険での対応となります。しかし、急性増悪期を脱した場合や指示期間を超えた場合、介護保険での対応に戻ります。

制度上のポイント

有効期間:14日間。月をまたいでも有効。
保険:医療保険

以下に全国保険医団体連合会が公表している様式を記載します。
特別訪問看護指示書
※出典:全国保険医団体連合会

【訪問看護師が見るべきポイント~事例~】

特別訪問看護指示書を見る際にまず押さえておきたいのは右上の特別看護指示期間です。14日間というルールがあるのですが、よくある誤りとして15日間となっていることがあります。指示書自体が有効か否かの重要なポイントになりますので、必ずチェックするようにしましょう。

1-3 精神疾患である場合に交付される精神科訪問看護指示書

精神疾患のある利用者に対して入手することとなるのが、精神科訪問看護指示書です。

精神科訪問看護指示書は、精神科を標榜している保健医療機関の精神科を担当している主治医が交付することができます。精神科訪問看護指示書を入手する場合は、訪問看護指示書の入手は必要ありません。

なお、認知症に関しては、精神科訪問看護の対象とはなりませんので注意が必要です。

制度上のポイント

有効期間:最長6か月間。日付の記載がない場合は1ヶ月間のみ有効。
保険:医療保険

※介護保険対象者に関しては、一般的に在宅サービスを利用する場合は医療保険より介護保険が優先されます。2014年の診療報酬改定によって、精神科訪問看護指示書を使用する訪問看護に関しては、介護保険対象者であったとしても医療保険が適応されます。
精神科訪問看護指示書
※出典:全国保険医団体連合会

【訪問看護師が見るべきポイント~事例~】

精神科訪問看護指示書でまず見るべきポイントは『緊急時の連絡先』がしっかり記載されているこをと確認することです。

精神疾患の利用者は同居の家族がいない方も多いです。そして、最も困るのが連絡が取れない場合や、不在時の対応です。その際には、とにかく『緊急時の連絡先』に連絡する必要があるため、ここの記載があるかどうかをしっかりと確認しましょう。

1-4 点滴を行う際に交付される在宅患者訪問点滴注射指示書

1週間のうち3日以上点滴注射を行う必要がある場合に交付される指示書です。利用者1名につき週1回(指示期間は7日間)に限って、月に何度でも交付できます。末梢静脈のみ対象でIVHは対象外のため、注意が必要です。

在宅利用者訪問点滴注射指示書は、上述の様式のように訪問看護指示書・特別訪問看護指示書と2段併記となっている場合が多いです。そのため、訪問看護指示書や特別訪問看護指示書と在宅利用者訪問点滴注射指示所の両方を交付する場合、両方の項目にチェックを入れる必要があります。

在宅利用者訪問点滴注射指示書の有効期間は7日間のため、7日間の点滴が終了した後に点滴を継続する場合、訪問看護指示書や特別訪問看護指示書にチェックを入れて再交付しなければなりません。

制度上のポイント

有効期間:7日間 ※週3回以上点滴を行う場合にのみ交付されます。
保険:医療保険・介護保険

【訪問看護師が見るべきポイント~事例~】

在宅患者訪問点滴注射指示書で確認すべきポイントは、病院勤務の時と同じですが、混注がないか等内容を細かく確認することです。

例えば、指示内容が「ソリタT1:500ml」「ラシックス2A混注」の場合に、病院と同じように訪問看護でも1Aと2Aの間違いが多いので、事前に指示書をしっかりと確認しておきましょう。

2 【介護保険】訪問看護指示書が交付されるまでの流れ

訪問看護を行う上で訪問看護指示書は必要不可欠です。病院で勤務をされている方も、学生時代に訪問看護ステーションへ実習に行った際に、訪問看護指示書を目にしたことがあるでしょう。また、在宅療養から病院へ入院となった利用者様の場合、訪問看護ステーションから看護サマリーと一緒に訪問看護指示書が送付されることもあるかもしれません。

では、訪問看護指示書はどのように交付されているのかご存知でしょうか。流れを紹介します。

2-1 地域包括支援センターや担当のケアマネージャーに相談

要介護認定を受けている方は、担当のケアマネージャーに「訪問看護を利用したい」という旨を相談します。主治医への確認がまだの方は、ケアマネージャーから医師に相談してもらうか、本人・家族で相談するか決めておきます。

要介護認定を受けていない方は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所、役所の介護保険課等へ連絡します。連絡することで担当のケアマネージャーが決定し、要介護認定の手続きを行ってくれます。要介護認定の手続きには約1か月かかるため、早めに手続きを行うことが大切です。

2-2 サービス内容について相談

本人・家族から、担当ケアマネージャーに、訪問看護を利用することで受けることのできるサービス等について確認します。その後、ケアプランを作成してもらいます。

利用する事業所を決める場合はケアマネージャー等が紹介した複数の事業所より、利用する事業所を選ぶ必要があります。

2-3 訪問看護指示書の作成

利用する事業所より、主治医へ訪問看護指示書の記入依頼が行われます。交付までに1週以上かかる場合もあります。

2-4 訪問看護利用開始

訪問看護指示書が交付されたら、サービスの内容説明や開始日、利用頻度などを確認し、契約します。事業所が訪問看護計画書を作成し、訪問看護が開始となります。

3 【医療保険】訪問看護指示書が交付されるまでの流れ

3-1 主治医に相談する

直接主治医に「訪問看護を利用したい」という旨を相談します。すでに利用したい事業所が決まっている場合、直接事業所へ連絡を行います。

3-2 訪問看護指示書の作成

主治医に訪問看護が必要と認められた場合、事業所依頼のもと主治医より訪問看護指示書が交付されます。

3-3 事業所との契約・利用開始

訪問看護指示書が交付されたら、サービスの内容説明や開始日、利用頻度などを確認し、契約します。事業所が訪問看護計画書を作成し、訪問看護が開始となります。

4 指示に基づく訪問看護を行う上での注意点

訪問看護を行う際、訪問看護指示書に記載されている内容をしっかり守ることが大事ということを紹介しました。では、実際に訪問看護を行う上では、どのようなことに注意しなくてはならないのでしょうか。紹介しますので、確認しておきましょう。

4-1 退院時から病院スタッフと連携をとる!

訪問看護は在宅で過ごされる方を対象として看護を提供します。そのため、「退院後から訪問看護師が介入すればいい」と考えている方もいるでしょう。確かに、実際に看護を提供するのは在宅に戻られてからです。しかし、訪問看護師は入院中から介入をしておきましょう。

退院時のサマリーで、ADLや看護上の問題などを確認することができます。しかし、サマリーで確認できる内容はごく一部のため、実際に自分の目で見ておいた方が正確な情報を得ることが可能です。また、早期から介入することで信頼関係を構築しやすくなりますし、病院で担当しているスタッフと情報交換を行うこともできます。さらに、退院に向けての外泊を調整しやすく、退院後の生活をイメージしやすくなるのです。

在宅での生活へ円滑に移行できるよう、早期から介入できるよう調整しましょう。

4-2 指示内容に変更がないか常に確認する!

特別訪問看護指示書や在宅利用者訪問点滴注射指示書は有効期間が短いため、内容をこまめに確認します。しかし、訪問看護指示書や精神科訪問看護指示書の場合、有効期間は最長6か月です。関わる期間が長いと指示書の内容をある程度把握してしまい、毎回指示書を細かい部分まで確認しなくなりがちです。その結果、内容が変更されている点を見落としてしまい、指示書通りの看護を提供できない可能性が生じます。

上述したように、訪問看護は指示書記載の指示内容を守ることが何よりも大事です。そのため、関わる期間が長く指示書の内容を十分に把握できていたとしても、毎回指示書の内容をしっかりと確認するようにしましょう。

5 まとめ

いかがでしたか?訪問看護指示書の種類や注意点、訪問看護を行う際に大事なことなどについて紹介しました。

訪問看護指示書にはいくつか種類があり、それぞれ記載されている内容は異なります。また、指示の有効期間も異なるため、しっかり把握しておきましょう。

訪問看護を行う際、指示書記載の指示内容を守ることが何よりも大事です。自分の判断で指示以外のことを実施すると、利用者様にも同じ職場のスタッフにも迷惑をかけることになります。

また、訪問看護指示書の内容に変更がないか毎回確認し、限られた中で最適なケアを提供できるよう工夫することも大切です。訪問看護師として働きたいと考えている方は、紹介した内容をしっかり把握しておきましょう。