ユマニチュードとは認知症ケア技法のこと!具体的事例・効果・学び方・ゴールを徹底解説

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ユマニチュードとは認知症ケア技法のこと!具体的事例・効果・学び方・ゴールを徹底解説

認知症などにより、日常生活を送ることが難しくなった高齢者の方には、看護や介護のケアが必要です。しかし、患者さんへの話し方や接し方によっては、患者さんがスムーズに看護・介護のケアを受け入れてくれないケースも珍しくありません。

そこで注目したいのが、認知症ケア技法の1つである「ユマニチュード」という方法です。では、ユマニチュードとは一体どのようなケア技法なのでしょうか。看護師や介護士に限らず、誰にでも実践できるユマニチュードという手法について知り、ケアを受ける側と介護側との、良好な関係の構築を目指しましょう。

1 ユマニチュードとは

「ユマニチュード(Humanitude)」とは、ケアを受ける人の「人間としての尊厳」「人間らしさ」を大切にし、ケアを行う人の優しい気持ちを伝えることを重要視した認知症ケア技法です。

フランスのイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが、40年間にわたって3万人を超える患者さんと向き合いながら編み出した実践的なケア技法であり、10か国以上の医療現場・看護現場で取り入れられています。

日本も例外ではありません。少しずつではありますが、知覚・言語・感覚によるコミュニケーションに基づくユマニチュードが取り入れられています。看護・介護のケアが必要な高齢者が増えていることからも、看護師や介護士など、ケアに関わるすべての方が知っておいて損はない技法といえるでしょう。

2 認知症の方との良好な人間関係を築くことができる理由

ユマニチュードに基づくケアを受けた高齢者は、介護者からの敬意や思いやりを感じられるようになります。

ユマニチュードでは、ケアを受ける人の「人間としての尊厳」「人間らしさ」を大切にし、介護者の優しい気持ちを伝えることが重要とされているからです。

介護者から「大事にされている」「1人の人として対等に向き合ってくれる」という優しい気持ちを感じれば、ケアを受ける方も、介護者への信頼感を持てるようになります。優しい方や信頼する方の言葉は耳に届きやすいため、ケアへの協力的・積極的な参加が期待できるでしょう。

3 介護側にとってのユマニチュードの効果 

ユマニチュードは、ケアを受ける側が優しい気持ちでケアを受けられるという点が最大の魅力ですが、ケアを受ける側のみならず、介護側にも以下の良い影響をもたらします。

ケアを行う側にとってのユマニチュードの効果

・自分が行ったケアが良かったと実感できる

・仕事へのやりがい・満足感が向上する

・仕事での悩みが減少する

ユマニチュードケアの考え方を基本として、自分が考えたケアを積極的に受けてもらうことができれば、患者さんは快方に向かう可能性が上がります。自分たちのケアで相手を良い方向へ変えられると実感できれば、仕事へのやりがいや満足感も向上し、仕事で悩むことも少なくなるでしょう。

ユマニチュードの第一人者として知られる国立病院機構東京医療センター総合内科医長の本田美和子先生は講演の中で、ユマニチュードを導入しているフランスの病院では、認知症患者の看護師の離職率が低下し、医療費(投薬等)の減少といった効果もみられたと紹介しています。(参照:こころの未来研究センター

このように、ユマニチュードケアは、認知症ケアを受ける人・行う人の双方にプラスの効果やメリットがあります。認知症以外のケアにも応用できるため、ぜひ身に付けておきたいスキルです。

4 【事例】ユマニチュードケアがある場合とない場合の違い 

ユマニチュードケアを導入することで、ケアを受ける側も介護者側も、優しい気持ちでケアに臨めます。

具体的には、ユマニチュードケアを行った場合と行わなかった場合とでは、どのような違いがあるのでしょうか。ユマニチュードケアを実際に取り入れた介護施設での事例を見てみましょう。

■ユマニチュードケア導入前後の変化

導入前導入後
ケアを受ける側(患者・利用者)

介護ケアに対する不安が大きい

・一度拒否感を覚えると、介助を受けるこを拒む

「大切にされている」という感情が芽生え、ケアに協力的になる方が多かった

安心感を得られ、笑顔も増えた

介護側(介護士など)

・「トイレの時間ですよ」など、利用者の意思を尊重した聞き方ではなく、業務として利用者に接していることが多い

・利用者の身体に触れる機会が少ない

・目線を合わせていないことも多い

・目線を合わせることでコミュニケーションが円滑になり、介助をしやすくなった

利用者の方とスムーズにやり取りできるようになり、仕事でイライラすることが減った

・利用者の細かな変化に気づきやすくなった

 患者さんや利用者の方への接し方を変えるだけで、ケアを受ける側も行う側も救われるユマニチュード。まずは、ユマニチュードに関する基本的な内容を理解することが大切です。

5 ユマニチュードのゴールは?

お互いがかけがえのない時間を過ごしたと感じられるようなケアになることが、ユマニチュードケアのゴールとなります。

そのために、ユマニチュードは、ケアのレベルを3つに区分し、必要なケアを選択していきます。

■ユマニチュードケアのレベル 

レベル1:回復を目指す少しでも立てる方には立ってもらって清拭を行うなど、筋力低下の予防や、関節可動域の拡大を目指す
レベル2:機能を維持する少しでも歩ける方には、できる限り歩いてもらうなど、ケアを受ける方が現在持っている機能をキープする
レベル3:最期まで寄り添う回復や機能維持が困難な場合、本人が最期まで尊厳を持って穏やかに過ごせるよう寄り添う

ユマニチュードケアでは、ケアを受ける方の状態に合わせ、「見る」「話す」「触れる」「立つ」という4つのコミュニケーションの要素を軸として、ケアする人とケアされる人が良い関係を構築することが大切です。

6 ユマニチュードにおける「4つの柱」とは?

ユマニチュードケアの基本は、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱から構成されています。それぞれの内容について、具体的に確認しておきましょう。

①「見る」
相手の正面から顔を近づけ、見つめる時間を意識的に長くとりましょう。水平に目を合わせて、対等な関係であることをアピールすることがポイントです。

②「話す」
前向きな言葉を使い、優しく穏やかに話しかけてください。相手から反応が返ってこない場合には、ケアの内容を実況するように説明するなど、「オートフィードバック」を行うこともおすすめです。

③「触れる」
患者さんに触れるときは、手のひらを使って優しく撫でるように触れましょう。急に触れたり離したりせず、患者さんがびっくりしないようにゆっくり行うことがポイントです。触れるときは、腕や背中といった部位からスタートし、顔や唇、手といった敏感な部位は最後に行い、手首や足をつかまないようにケアを進めましょう。

④「立つ」
立つことで、筋力低下や骨粗しょう症の進行を防ぐことができます。血液の流れも改善できるため、患者さんの能力に応じて立位でのケアを取り入れましょう。

7 ユマニチュードケアを進めるための5つのステップとは?

ユマニチュードケアでは、患者さんとの「出会い(ケアを始めるとき)」から「別れ(ケアを終了するとき)」までの流れが重視されています。ユマニチュードケアにおける「出会い」から「別れ」までの5つのステップについて、簡単に見ていきましょう。

①出会いの準備:介護者が来たことを伝える
入室時には3回ノックして3秒待ちましょう。反応がなければもう一度繰り返し、それでも返事が返ってこなかった場合には、1回ノックして入室します。ノックして患者さんの反応をうかがうことで、「自分に会いに来た人がいる」ことを知らせ、患者さんに来訪者を受け入れるかどうかを選んでもらうことができます。

②ケアを行う準備:相手と関係性を築く
入室したら、「あなたに会いに来ましたよ」「一緒に楽しく過ごしましょうね」といったメッセージを伝えましょう。すぐにケアの話に入らないことがポイントです。相手をしっかりと優しく見つめ、前向きな言葉で話しながら、これから行うケアに対する同意を得ましょう。

③知覚の連結:優しい気持ちに包まれるケアを行う
「見る」「話す」「触れる」のうち、2つ以上の柱を使いながら、「あなたは大切な存在ですよ」という気持ちが伝わるように、優しく話しながらケアを行います。患者さんがリラックスした状態で心地よくケアを受けられる雰囲気を作りましょう。

④感情の固定:心地よいケアの記憶を残す
感情を伴う経験は、記憶に残りやすいといわれています。「あなたと過ごせて楽しかった」のような前向きな言葉を使いながらケアを終わらせることで、「介護ケア=心地よい経験」という記憶を患者さんに残してもらいましょう。

⑤再会する約束:次回のケアに向けた準備
患者さんに「また一緒に楽しい時間を過ごしましょう」といった言葉がけを行い、次回のケアに繋げましょう。

8 ユマニチュードを学んで欲しい人

ユマニチュードケアは誰でも学べるケア技法であるため、看護師や介護士といった職業の方だけでなく、認知症の患者さんのご家族の方にもおすすめです。ここでは、「認知症の患者さんのご家族」「看護職・リハビリ職・介護職」のそれぞれにおすすめの、ユマニチュードを学ぶ機会や日々のケアへの取り入れ方を紹介します。

8-1 認知症の患者さんのご家族

認知症の患者さんを自宅で介護しているご家族も多いでしょう。介護を行っているご家族の方も、ユマニチュードケアを学んで継続して実践することで、介護ケアに対する負担が小さくなることが期待されています。

認知症など、看護・介護が必要な病気・ケガを抱えている患者さんのご家族や、高齢のご家族がいる方は、ぜひ一般向けのユマニチュードケア研修に参加してみてください。

8-1-1 おすすめの学ぶべきコース・場所・料金

認知症の患者さんのご家族など、医療従事者やリハビリ職、介護職以外の方で、ユマニチュードケアについて学びたい方は、一般向けのユマニチュードケア講座を受講することをおすすめします。

ユマニチュードケアの研修にも様々なものがありますが、まずは、ユマニチュードケアの構築者であるイヴ・ジネスト氏が代理人を務める「SAS Humanitude社」と提携しており、日本で唯一正規のユマニチュードケア研修の企画と運営を行っている「株式会社エクサウィザーズ」が催す研修を受けるとよいでしょう。

一般向けのユマニチュードケア講座には、「市民講座『初めて学ぶユマニチュード』」があります。ユマニチュードケアの基本的な考え方や、4つの柱の中の「見る」「話す」「触れる」の3つを中心としたワークショップを通じてユマニチュードケアのことを、さらに詳しく知ることができる講座です。

受講料は6,000円(税抜)、受講時間は2時間ほどで、東京や大阪、名古屋といった主要都市で開催されています。ぜひ最寄りの都市で開催される講座を受けてみましょう。(参照:市民講座「初めて学ぶユマニチュード」

8-1-2 日々の介護で時間に余裕がない中でも特にこれは実践した方が良いケア

患者さんのケアを行うときは、相手に自分のことがよく見えるよう、正面から同じ目線でコミュニケーションをとりましょう。低めの声で穏やかに声をかけてから触れるようにし、「あなたのことを大切に思っているよ」ということが伝わるよう、患者さんと接することが重要です。

介護を行っているご家族の方も、自分の予定などでケアを行う時間に余裕がない日もあるでしょう。時間がないときでも、ユマニチュードケアの基本を押さえた接し方を心がけることが大切です。

8-2 看護職・リハビリ職・介護職

看護職・リハビリ職・介護職は、認知症の患者さんなど、ケアを必要とする方と接することが主な業務です。一般向けの講座に参加しても良いですが、専門職向けの研修を段階的に受けることをおすすめします。

8-2-1 おすすめの学ぶべきコース・場所・料金 

初めてユマニチュードケアを学ぶ専門職の方は、1日間の「入門コース」がおすすめです。

「入門コース」では、ユマニチュードに関する哲学や、4つの柱を基本としたユマニチュードの技法、ケアを実践するための5ステップを学びます。これらの知識を通した基本実技演習を行い、研修修了です。

「入門コース」の受講料は27,000円(税抜)となっており、一般向けの講座と同様に日本の主要都市で広く開催されています。ユマニチュードの基礎を学び、今後の仕事に活かしたいと考えている方は、ぜひ受講してみてください。(参照:ユマニチュード『入門1日間コース』

更にユマニチュードケアについて詳しく学びたい専門職の方は、2日間に渡って行われる「実践者育成2日間コース」を受けましょう。ユマニチュードに関する哲学や記憶に関するメカニズム、認知症への理解を深めた上で、実技演習を行い、自身の業務に落とし込めるような研修内容となっています。

「実践者育成コース」の受講料は53,000円(税抜)であり、主に東京で開催されています。より実践に近いことを学びたい方は、受講申し込みを検討しましょう。(参照:ユマニチュード 実践者育成2日間コース

8-2-2 日々の看護で時間に余裕がない中でも特にこれはやったほうがいいケア

忙しい中でも、常に「見る」「話す」「触れる」といったポイントは押さえながら、ケア内容を前向きに伝えたり、相手をポジティブに評価したりするなど、「大事なあなたと少しの時間でも一緒に過ごせて楽しかった」ということが伝わるような接し方を心がけましょう。

看護師やリハビリ職、介護職の場合、自分が担当する患者さんは1人ではないことがほとんどです。そのため、1人の患者さんにかけられる時間が少なくなることも珍しくありません。

9 まとめ

ユマニチュードケアは、誰でも学べる認知症ケア技法であり、ケアを受ける方も介護者も、優しく前向きな気持ちになれる方法です。この記事でご紹介した内容をもとに、ユマニチュードに関する研修を受講するなど、ユマニチュードへの理解を深めましょう。

病院や介護施設でのケアだけでなく、ご家庭でもユマニチュードケアを取り入れることもおすすめです。介護ケアの時間を楽しく過ごし、患者さんが最期まで優しい気持ちで生活できるようにサポートしましょう。

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