看護師だったら知っておきたいインシデントとヒヤリハット~意義・効果~

インシデントとヒヤリハット~意義・効果~インシデントとヒヤリハット~意義・効果~

看護師だったら知っておきたいインシデントとヒヤリハット~意義・効果~

インシデントとヒヤリハットって何がどう違うの?
インシデントやヒヤリハットって何で書かないといけないの?
こういった疑問を持ったことはありませんか?

実は、インシデントとヒヤリハットは同じ意味なんです。
ではなぜ世の中には、インシデントとヒヤリハットは別ものという情報がたくさんあるのでしょうか。

そんな疑問をこの記事では解決します。
この記事を読めばインシデントとヒヤリハットの意義や目的が明確になり、整理されることでインシデントやヒヤリハットに前向きに取り組むことができるようになります。

1 インシデント、ヒヤリハットは同義

世の中にはインシデントとヒヤリハットは違うものという解釈や説明が多く存在しますが、国や日本医師会の医療安全に対する基本方針に忠実に沿って考えていくと、インシデントとヒヤリハットは同義であると言えます。

厚生労働省はインシデントとヒヤリハットを同義であると定義していますし、また、日本医師会は、発表している「医療従事者のための医療安全対策マニュアル」の中で、インシデントレポートは、“ヒヤリとしたりハッとしたりした体験から自発的に提出するレポート”であると定義しているからです。(引用:日本医師会 医療従事者のための医療安全対策マニュアル

厚生労働省のインシデントの定義をより詳細に紹介すると、以下のように定義されています。

①日常診療の場で、誤った医療行為などが患者に実施される前に発見されたもの
②あるいは誤った医療行為などが実施されたが、結果として患者に影響を及ぼすに至らなかったもの

インシデントの目的は、重大な医療事故を未然に防ぐことです。
これはハインリッヒの法則と関連していて、ハインリッヒの法則とは、1件の重大な事故の背後には、重大な事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には事故には至らなかったが300件の異常、いわゆるインシデントが隠れているというものです。

2 インシデント/ヒヤリハットの目的と大事な2つの効果

インシデント/ヒヤリハットの目的は、重大な医療事故につながりかねない「ヒヤリ」としたこと、「ハッと」したことについて、根本原因をつきとめ、重大な医療事故が発生する前に対策をたて、事故を未然に防止することにあります。

2-1 効果①:危機感受性を向上させ、医療事故を余裕をもって回避できるようになる

インシデント/ヒヤリハットに真剣に取り組むことで、看護師の医療事故に対する危険感受性が向上し、結果的に医療事故を防ぐことができます。

医療事故につながるインシデント/ヒヤリハットするような状況が発生した場合、余裕を持って回避できるか、そうではなくあわてて回避しようとするかで、事故を起こす確率は大きく変わります。
医療事故が発生する可能性を常に意識しながら看護を行い、インシデント/ヒヤリハットする状況を意識的にレポートにまとめることは、看護師の危険感受性を向上させるために極めて効果的です。

日々インシデント/ヒヤリハットに真剣に取り組む看護師とそうでない看護師とでは、気づいたときには看護師としての能力に、大きな差ができています。患者さんからも病棟内からも信頼を得る看護師になるために、インシデント/ヒヤリハットは継続的に真剣に取り組みましょう。

2-2 効果②:未然防止策により、日々の業務に安心感を持つことができる

インシデント/ヒヤリハットが起こった根本原因を突き止め、その対策を立案・実行することで、こういう時はこうすれば良いという事前準備がされた状態で日々の看護業務を行うことができます。そのため、日々安心感を持って落ち着いて看護業務を行うことができます。

もし仮に根本原因を間違えて特定してしまえば、その後の未然防止策が的外れなものとなる恐れがあります。

日々インシデント/ヒヤリハットに真剣に取り組むことは、物事を整理することに他なりません。これを続けることで、理路整然と話すことができるようになり、相手にとって理解しやすい説明を行うことができるようになるため、コミュニケーション能力の向上にもつながります。看護師として自信をもって業務を遂行でき、さらに患者さんに安心感を与えられるようになると思います。

3 インシデント/ヒヤリハットで医療事故を防止するための4つのステップ

インシデント/ヒヤリハット最終目標はレポートを書くことではなく、医療事故を防止することです。
そのための4つのステップを紹介します。

3-1 ステップ1:医療安全の担い手は看護師自身

看護師自身が医療安全の担い手という自覚を持ち、インシデント/ヒヤリハットを積極的に見つけ、レポートを書くことが医療事故の防止につながる最初のステップです。看護のプロフェッショナルとして、プロの目、プロの技術、プロの経験に基づく確かな観察眼に依拠することによって、ハインリッヒの法則がいう、300件の異常を発見することができます。

3-2 ステップ2:根本原因を突き止めるレポートの書き方

根本原因を突き止めるレポートを書くには、スピーディに質の高いレポートを作成するスキルが必要です。

インシデント/ヒヤリハットレポートはたくさん書くことに越したことはありませんが、時間は有限ですし、得られる効果の実感よりも負担を感じることが大きくになってはレポートを書くことに後ろ向きになってしまうからです。

スピーディに質の高いレポートを作成するには、①5W1Hに即した構造的整理と②なぜなぜ分析を行うことが効果的です。
これらレポートの書き方はこちらの記事にまとめましたので、ご覧ください。
インシデント?アクシデント?絶対に迷わない判定方法と早く書く方法

3-3 ステップ3:集計・分析を基に対策をたて、周知公開と実行

多数のインシデント/ヒヤリハットレポート情報を収集・分析することで、医療事故の根本原因を明らかにし、対策を立てます。プロの眼、プロの技術、プロの経験に依拠した実行可能な未然防止策を確立し、周知・実行することで、看護師1人1人が安心感を持って日々の看護業務にあたることができるようになります。

また、傷害の大きさなどで考えた場合の医療事故の大きさ、発生頻度から重要度、優先順位を選定し、優先順位の高いものから対策を立案し、周知・実行することでリスクの大きい個所から手当することが可能となります。

頻度も多く危険な一例として、「誤った患者への輸血」の事例を紹介します。

【事例】
患者(A型)にFFPが投与されていた。看護師は次に投与するFFPを準備する際、冷凍庫から患者A(A型)のFFPを取り出すつもりで、引き出しが上下に隣接しており残数も同じO型のFFPを取り出し、確認しないまま解凍器にセットした。その後、バーコードによる輸血認証をしたところ、血液型が異なるというエラーが認証システムの画面上に表示されたが、看護師は、エラーは機械の故障によるものと思い込み、そのまま接続した。輸血伝票の処理を行っていた際、輸血バッグに付いているシールの色が違うことに気づき、誤ったFFPを投与したことが分かった。

【未然防止策】
院内の輸血マニュアルを遵守し、輸血用血液製剤を接続する直前に、患者と投与する製剤の照合を行う。
※出典:公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 第50回報告書別冊)

3-4 ステップ4:効果測定とその開示

ステップ3で立てた対策は実際に効果的だったのか、事故発生数の時系列比較や病院内の看護師へのアンケート調査により確かめます。
病院内の看護師へのアンケート調査は、安心して業務に取り組めるようになっているか確認することができ、未然防止策の効果を検証するにも役立ちます。

未然防止策を立て、周知・実行した前後で事故数を比較することで、当該対策が効果的であったかが見えてきます。未然防止策を周知・実行した前後の事故数をグラフ化するなど見える化し、病院内に開示することで、インシデント/ヒヤリハットレポートに意味を持たせることができ、日々のレポート作成のモチベーションを高め、良い循環を生むことができます。

効果測定を行うことで、未然防止策の有効性を評価することができ、策自体のブラッシュアップを行うことにもつながります。

4 当社のヒヤリハットとアクシデントの割合(2019年4月)

訪問看護ステーションを運営する当社では、インシデント/ヒヤリハットレポートに積極的に取り組む姿勢を促すため、毎月アクシデントレポートを含めてレポート件数を集計し、グラフの形に見える化し、全スタッフが閲覧できる場所に公開しています。

インシデントとヒヤリハットの割合
N=18

2019年4月のグラフを紹介します。

こちらのグラフを社内に公開したところ、看護師1人1人のヒヤリハットに対する意識が高まり、月に1枚~2枚だったヒヤリハットが7枚になりました。こういったグラフを一般にも公開している企業・病院はほとんど見たことがありません。
積極的な開示は看護師1人1人がインシデント/ヒヤリハットレポートに積極的に取り組む姿勢を後押しすることができます。

5 まとめ

インシデント/ヒヤリハットに真剣に取り組むことで、医療事故に対する危険感受性が向上し、患者さんや病棟内で信頼される看護師になることができます。
日々の中で紹介した4つのステップに沿って実践することで、他の看護師よりも高いスキル・能力を身につけてもらえたら嬉しいです。