看護師の申し送り時間を短縮するための最重要ポイントは意識改革である

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看護師の申し送り時間を短縮するための最重要ポイントは意識改革である

申し送りの平均時間は16分。これはとある大学病院での研究結果です。あなたの勤務する病院では30分と時間をたっぷりかけていませんか?(参考:東京医科大学病 学術リポジトリ 申し送りの不要性を検証

「もっと申し送りの時間を短縮しよう!」と声をかけても効果はありません。

申し送りの時間を短縮するためには看護師1人1人の意識改革とルール化がとても大事です。そして、意識改革を行うためのポイントはメリットが大きいことを1人1人に伝え続けること及び1人1人が意識することです。

長い時間の申し送りはベッドサイドケアに空白の時間を作るだけでなく、始業が遅れ、看護にかける時間や質にも影響を与えます。

今回は申し送り時間を短縮するための意識改革の仕方について解説していきます。

1 申し送り時間短縮のために重要な意識改革とルール化

申し送りの時間を短縮するためには単に「申し送りの時間を短くしよう!」などと声をかけるだけでは成立しません。看護師1人1人に対する根本的な意識改革とルール化が必要です。

そもそもなぜ申し送りが長時間となってしまうのでしょうか。とある大学病院の調査によれば申し送りの短縮に賛成の看護師は約80%であるという結果が出ています。また、アンケート調査によると適切な申し送りの時間は5分~15分との回答が大半です。申し送りとしてこのような結果がありながら申し送りが長時間化している1番の理由は「看護師たちの意識」の問題と申し送りの時間がルール化されていないことといえます。(参考:東京医科大学病 学術リポジトリ 申し送り短縮に対する意識の改革

申し送りの時間は例えば10分とまずはルールを決めてしまって、それを日々徹底していくことが大事です。

とはいえ、申し送りをする側、すなわち送り手の意識として、どこまで送ればよいのか不安、口頭で送ったほうが安心という意識があります。また、申し送りを受ける側である受け手としては、口頭で申し送られないため不安を感じる、観察ポイントを見逃してしまうのではないかなど「申し送りを聞く」という受身の姿勢・意識が強くあります。これは経験年数の長い看護師であればあるほど強い傾向にあるようです。

つまり、長年長い申し送りに慣れてしまい、申し送り=長いものと捉えており、短くすることに抵抗を感じてしまっているようです。「記録に書いてあることのほとんど全てを申し送ってもらいたい」という意識を根本から変えていくことができなければ申し送りの短縮化は望めないということです。

2 意識改革のための最重要ポイントは短縮のメリット・デメリットを伝えていくこと

申し送りの時間短縮のための意識改革を行っていくには看護師1人1人に申し送り時間を短縮することのメリット・デメリットをしっかりと認識してもらい、メリットの方が大きいということを時間をかけて説得していかなければなりません。そこで、どんなメリット・デメリットがあるかを紹介していきます。

【メリット①】看護師本来の業務であるケアの時間が充実する

申し送りの時間短縮によるメリットはケアの充実です。申し送りに時間をとられないのですから当然、他のケアに力を入れることができます。

申し送りの平均時間は病院や診療科によっても異なりますが、今回申し送りの時間を研究した機関によれば最高で40分弱の申し送りをされているところもあります。40分という時間はケアを行うには十分であり、患者さん1人以上にケアが提供できるといっても過言ではありません。(参考:東京医科大学病 学術リポジトリ 申し送りの不要性を検証

看護師としてケアを充実するということは本来の業務であり、ここに力を注げることが看護師の神髄ではないでしょうか。

【メリット②】ベッドサイドケアの時間が増して患者さんとの関わりがもてる

申し送りを短縮して確保できた時間は患者さんのベッドサイドケアに充てることもできます。患者さんとじっくりかかわるというのも先ほどのケア同様に看護師としての基本業務です。

患者さんとじっくり関わりをもつことは、患者さんを知ることができるだけがメリットではありません。当然ながらじっくりと関わってもらった患者さんは「自分の話をしっかりと聞いてもらえた」と病棟に好感が持てるでしょう。

近年モンスターペイシェントなど患者さんと医療者間でのトラブルは多々あります。これらを回避する、モンスターペイシェントを作らないという観点から見ても患者さんとじっくり関わる時間を作ることは重要でありその時間を作るために省ける業務が申し送りとなるのです。さらに患者さんから信頼される病棟、病院となり、患者さんの評判も良くなれば受診者も増え、病院の経営に良い影響をもたらすことも考えられます。

【メリット③】記録にあてる時間が確保されることでチーム医療の連携が強まる

看護記録は看護師法でも定められ、授業や実習でも細かく教わるほど大切なものです。この記録を充実させることは、申し送りをするよりも重要です。むしろ、この記録を見れば申し送り時間は必要最小限に短縮することが可能となりますし、その方向にもっていくことが何よりのポイントとなるのです。

また、それだけでなく近年特に重要視されている「チーム医療」という観点からも記録の充実は大変重要です。患者さんに1番近い存在である看護師の充実した記録は看護師同士だけでなく他職種への有益な情報となりさらに、チーム医療を展開していくことが可能となります。

記録を充実させるということは看護師同士だけでなく他職種にとってもありがたいことなのです。

【メリット④】看護師自身が精神的ゆとりを持てる

20~40分、今までの業務時間の中に空白の時間ができるのですから当然ながら看護師の精神的ゆとりを持つことができると考えます。

特に、新人看護師や経験年数が浅い看護師は精神的な余裕がなく1分1秒の時間も惜しいほど。そんな看護師たちが30分もの時間をもらえればゆとりを持って仕事に打ち込むことができるのではないでしょうか。

また、ゆとりを持てれば早く自分の仕事を切り上げた人から他の看護師の手伝いをする助け合いの心も生まれます。そうすれば必然的に病棟内の人間関係もよくなります。

人間関係が良くなれば離職者も減ることでしょう。申し送りを短縮して看護師にゆとりを持たせることは病棟のマネジメントにもつながってくるのです。

【メリット⑤】カンファレンス時間をしっかり確保できる

実際に申し送りを短縮化している医療機関で多いのが、このカンファレンスの時間が確保できるということです。

カンファレンスは看護師及び他職種での情報共有や方向性の確認をしていくうえで、非常に重要である一方で、勤務時間中に時間を確保することが難しく、ついつい短くなって充分なカンファレンスができていないという医療機関も少なくありません。

申し送りで短縮できた時間をカンファレンスに充てることで、わざわざ業務時間中に時間を無理やり確保しなくてもじっくりとカンファレンスをすることができます。

また、カンファレンスの時間を充実させたことによって申し送りが短くても患者さんの状態を把握できるようになったという意見も出ており、カンファレンスの時間を確保することが申し送り時間の短縮につなげることができるという結果も出ているのです。

【デメリット①】患者さんの状態が連休明け等把握しづらくなる

医療機関が看護師の申し送りについての研究を行った結果で、最も多かったのが、この連休明けなどに患者さんの状態が把握しづらいということです。

2交代などで夜勤明けに2連休がある場合には、3日間ほど患者さんの状態が空白となります。そうすると3日分の情報を追うわけですが、電子カルテなら何スクロールもするほど情報が多く、連休明けの情報収集に多大な時間を費やします。ですが、申し送りを密にしてもらえれば聞いているだけで連休中の患者さんの情報は耳に入ってくるので情報を整理することができます。

【デメリット②】口頭で送られないため不安になる

前述した結果で次に多かったのが口頭で送られないということが不安であるというところです。

これは特に経験年数が長い、すなわち長い申し送りに慣れてしまった看護師に多い傾向にあります。すでに口頭で長い申し送りをされることが当たり前、申し送りで情報を収集するという方向性になってしまっているという証拠です。

口頭で申し送っていることはほとんどが記録の内容です。こういった看護師こそ申し送りに関する意識付けが重要です。

とはいえ、やはり人を相手にしている仕事ですからその人から直接口頭での話が聞きたいという方もいるはずです。直接相手の口から話が聞けないというのはデメリットに感じることもあるかもしれません。

【デメリット③】記録に時間がかかる

申し送りを短縮させるということは、記録を充実させることが大切で、患者さんの情報を厚くする必要があります。そうすると記録に時間がかかってしまい、これが業務へ影響を及ぼすと考える方も少なくありません。

例えば、パソコンが苦手な方が電子カルテで内容を充実させるとなればかなりの時間を要します。紙カルテであっても経時的に細かく記録を作成していくとなれば同じく時間を要します。

また、記録物が一か所に集約されていないという状態であればすべての記録簿に記録をつけることによって時間を要する可能性も出てきます。記録に時間をかけるなら患者さんのベッドサイドケアをしたい、だから申し送りを充実させればいいのではと思ってしまう方もいるというのが現状なのです。

ざっと見てみてもメリットは多く、申し送りを短縮化するということは看護業務を円滑にし、なおかつ申し送りの短縮化は看護マネジメントにも良い影響を及ぼすということが分かります。

3 意識改革を進めていくために重要な伝え方のポイント2つ

紹介してきたメリット・デメリットを1人1人一律に伝えていっても10分というルールの徹底及び意識改革はなかなか進みません。意識改革を進めていくには以下の2ポイントを工夫して伝えていく必要があります。

POINT

①看護師それぞれにマッチするメリット・デメリットを伝える

②相手の心に響くよう、強い言葉を作って訴える

それぞれ見ていきましょう

3-1 相手の頭の中を想像し、相手のニーズに一致するメリットを伝える

ざっくばらんな話をしたり、ランチに一緒に行って話すなど、仕事からは半歩離れた世界を意識して、まずは相手が今一番必要に感じていることをリサーチしましょう。

リサーチしてみて例えば、子供が産まれる前は業務開始の30分前に出勤してその日の業務の準備をすることで心に余裕をもって業務にあたっていた方が、今は2歳のお子さんを育児しながらの勤務で、毎朝保育園に送ってから出勤するため、業務開始ギリギリの出勤になってしまい、準備の時間を確保できず、心に余裕をもてないことにストレスを抱えているということがわかったとしましょう。この場合に伝えるべきは第2章の【メリット④】看護師自身が精神的ゆとりを持てるです。

このように相手のニーズに一致するメリットを伝えることが意識改革を進めていくうえで重要です。

3-2 ポイントを示すことで強い言葉となり相手の心まで届く

強い言葉というのは難しいようですが、凄く簡単に作れます。例えば、以下の言葉を話したいことの最初にいうだけで強い言葉になります。

『1番重要なポイントは~』
『たったこれをやるだけで~』
『1番実現したいことは~』

これらをメリットを伝える際に付けてあげれば良いのです。

例えば、上記の例に当てはめると『1番実現したいことは、1人1人の看護師が心に余裕をもって毎日看護ケアができる状況をつくることなんだ』と伝えていくのです。

4 一番の短縮は申し送りを廃止すること

記録を充実させることで申し送りを廃止することが可能です。記録を充実させることで申し送りを廃止できたという医療機関もあります。

近年、看護の世界では申し送りを廃止する方向で動いている医療機関も多く発表されています。また、先ほどのメリットやデメリットを見ていただいても、申し送りの短縮や廃止は看護業務を円滑に行う上でも非常に重要であるということがお分かりいただけたものと思います。

記録だけでなく業務の合間にミニカンファレンスを実施することで、今までの申し送りに似た口頭での情報共有を短時間で行うことができ、結果として記録に対する負担が軽くなったという意見もあります。(参照:東京医科大学 学術リポジトリ 申し送り廃止後における情報収集手段の見直しと改善策の提示

申し送りを廃止したいが記録に割かれる時間について悩んでいる、もしくはスタッフからそのような意見があったという医療機関においてはまずミニカンファレンスを実施し、そこから徐々に記録を充実していくというのが申し送りは医師に対して反対派のスタッフも納得できるベストな方法であると考えられます。

5 申し送り廃止への転換期に注意すべきこと

申し送りの廃止を決めて、さっそく実施されているいわば転換期に注意しておきたいのが情報の共有方法です。

申し送りがなくなれば記録にすべてを頼らざるを得ません。ですが、例えば、薬の記録と医師の指示、今日の処置内容がバラバラに書かれている、あるいはスタッフ全員がすぐに共有できるところになく、リーダーなど責任者の目にしか触れられないという状態であれば申し送りを廃止することはできません。そのため、フローシートのような一目で患者さんの情報を把握できるような記録のシステムを整えることが必要です。

また、申し送りがなくなったとはいえ次の勤務者に伝えたいことが全くないということはほとんどないでしょう。そのために活用したいのが申し送り簿です。

実際、申し送り簿やカンファレンスノートなど、患者さん全体の情報が別で書かれているノートはスタッフの中でも目を通すか否かには差があり、中にはほとんど目を通さないという方もいますが、申し送りがなくなるにあたりこれらのノートにもしっかりと目を通す習慣をつけさせるのも非常に重要になります。

6 まとめ

申し送りを短縮・廃止することで多くのメリットが得られます。これによって看護師自身だけでなく患者さん、そして何より病棟や病院にもメリットが得られることもあります。

現状は年代や経験によって申し送りはなくてはならない看護業務と捉えている方もいます。こういった多種多様な意見を受け入れたうえで、みんなが納得できるような方向性にもっていくのが看護師長をはじめとするリーダーの役目と言えます。また、看護師1人1人が意識しあうことが大切です。

看護師全員が意識を高めて一丸となって申し送りの短縮・廃止に取り組みましょう。