働きながら受けられる!看護師の特定行為研修について知るべき5つのこと

看護師の特定行為研修について知るべき5つのこと看護師の特定行為研修について知るべき5つのこと

働きながら受けられる!看護師の特定行為研修について知るべき5つのこと

病院の現場では、高度急性期、急性期、回復期、慢性期のいずれにおいても特定行為研修を修了している看護師の力が必要とされています。
在宅医療の現場では訪問看護ステーション、介護施設、診療所のいずれにおいても特定行為研修を修了している看護師の力が必要とされています。

特定行為研修を修了したことは資格にはなりませんが、これだけ多くの活躍の機会があります。

そして、認定看護師や専門看護師を目指す方の多くが一度病院を辞めたり休職して取得するのに対し、特定行為研修は働きながら修了することが可能な場合もあります。

看護師キャリアの次のステップを考えている方は是非この記事を一読していただき特定行為研修の概要から詳細まで知っていただきたいです。

特定行為研修を修了するとできるようになること及び実際の活動例の紹介から始まり、実際に研修に参加するまでの手続きや費用面並びに注意する点を1つの記事にまとめました。

この記事が1人でも多くの看護師のキャリアアップにつながれば幸いです。

1 特定行為で仕事の幅が広がる

特定行為研修とは、看護師が医師の作成した手順書により特定行為を行う場合に必要とされる高度なスキルや判断力などを習得するための研修です。

特定行為研修を修了した看護師は、手順書に基づく特定行為について、医師の判断を待たずにタイムリーな診療の補助を行うことができるようになります。
以下ではその詳細と実際の事例を紹介します。

1-1 手順書があれば医師の判断を待たずに、タイムリーな診療の補助を行うことができる 

特定行為研修修了後、手順書に基づき看護師が自身の判断で点滴を実施する場合を例に、看護師の仕事の幅の広がりとタイムリーな診療の補助について以下に図示します。
特定行為の実施の流れ
※出典:厚生労働省 特定行為に係る看護師の研修制度について

手順書は、医師又は歯科医師が看護師の診療の補助を行わせるための事前指示の1つで、以下の①から⑥が記載されているものをいいます。

①看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲
②診療の補助の内容
③当該手順書に係る特定行為の対象となる患者
④特定行為を行うときに確認すべき事項
⑤医療の安全を確保するために医師又は歯科医師との連絡が必要となった場合の連絡体制
⑥特定行為を行った後の医師又は歯科医師に対する報告の方法

なお、各医療現場の判断で、上記記載事項以外の事項及びその具体的内容を追加することもできます。

1-2 特定行為研修修了者の実際の活動事例

1-2-1 訪問看護の事例

褥瘡の壊死組織の除去などを行うために手順書を整備し、特定行為研修を修了している看護師の判断でタイムリーな処置を行うことができます。

また、脱水から救急搬送となるなど、入退院を繰り返していた利用者さんに対して、訪問先で状態を把握し、脱水と判断した際は、手順書に基づき輸液を行うことで、入退院の回数を減らすことができるようになります。

1-2-2 救急救命の事例

人工呼吸器の設定変更を行うために手順書を整備し、特定行為研修を修了している看護師の判断で設定変更を行うことができます。
医師との事前の相談と手順書を基に、看護師の判断でタイムリーに設定変更を行うことができるため、人工呼吸器からの早期離脱につながります。

2 特定行為研修の目的・意義、法令の整理

そもそも特定行為研修とはどのような目的でできた研修制度なのか、看護師の業務範囲が法律上変わるのか、この辺りの制度概要と法的整理を第2章では説明していきます。

2-1 特定行為研修の目的・意義

特定行為研修制度は厚生労働省が管轄している研修制度です。

厚生労働省は団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、在宅医療等の推進を図るため、医師又は歯科医師の判断を待たずに、手順書により、一定の診療の補助を行う看護師を養成したいと考えています。

この考えに基づき、医師又は歯科医師が作成した手順書に基づく看護師の特定行為を明確にし、特定行為を行うための研修制度を用意し、高度な見極めができ、かつ、専門的な判断を行うことができる看護師を育成し、患者さんを生活面、治療面の両面から支えることができる環境を目指しています。

2-2 明確な特定行為の範囲と分類

特定行為の範囲と分類は「地域における医療および介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」において、以下の通り、38行為21区分に明確化しました。
38行為21区分
※出典:厚生労働省 特定行為に係る看護師の研修制度について

なお、特定行為はこれまでの看護師の業務範囲に関する法的整理を変更するものではなく、「保健師助産師看護師法」における、診療の補助の範疇に含まれます。手順書は、医師が看護師の診療の補助を行わせるための事前指示の1つです。

3 特定行為研修の受講場所、申請手続き、費用、受講科目等

では、実際に特定行為研修を受講しようとした場合、どこに行けばよいのか、必要書類は何か、費用はどの程度かかるのか、ここで具体的に説明します。

3-1 受講場所:指定機関一覧

特定行為研修は厚生労働大臣の指定した指定機関でのみ受講できます。
指定期間は2019年2月時点で113機関あります。
全国の指定機関の分布を示すグラフを下記に示しますが、具体的な指定機関の一覧は厚生労働省のホームページにありますのでそちらをご参照ください。
⇒特定行為研修の指定機関一覧ページはこちら
特定行為研修を行う指定研修機関の状況を示すグラフ
※出典:厚生労働省 特定行為に係る看護師の研修制度 指定研修機関等について

3-2 受講申請手続きの注意点3つ

3-2-1 受講の要件:看護師経験年数に注意

厚生労働省は概ね3~5年以上の実務経験を有する看護師としていますが、指定機関ごとの募集要項によっては、5年以上の実務経験を必須とする機関もありますので、募集要項を事前に確認するよう注意してください。

3-2-2 申請書類:漏れがないよう注意

こちらも募集要項を事前にしっかり確認するようにしてください。

なお、多くの指定機関で共通して求められている申請書類は以下の通りです。
・履歴書
・受講申請書
・看護師免許のコピー
・推薦書

3-2-3 定員や出願時期にも注意

こちらも募集要項を事前にしっかり確認するようにしてください。
定員数は指定機関ごとに異なりますし、出願期間も指定機関によっては2週間程度しか設けていない場合もありますので、そこを逃すと少なくとも半年後まで応募できないことになります。

3-3 カリキュラムは共通科目と区分別科目に分かれる

特定行為研修は、全ての特定行為区分に共通する「共通科目」と各特定行為に必要とされる能力を身につけるための「区分別科目」に分かれており、必修である共通科目と区分別科目で構成されます。

共通科目はどの指定機関でも多少の違いはあれど、ほぼ同じですが、区分別科目については、指定機関ごとに学ぶことができる科目が異なります。具体的な指定機関ごとの区分別科目一覧は厚生労働省のホームページにありますのでそちらをご参照ください。
⇒指定機関ごとの区分別科目一覧ページはこちら

3-4 共通科目はeラーニングがおすすめ

共通科目は多くの指定機関がeラーニングを導入しており、通わなくても自宅で受講できます。

また、eラーニングを活用している指定機関の方が後に出てくる費用が安い傾向があります(おそらく講師等の人件費がかからないためです)。費用も安く、通わず自宅で受講できますので、eラーニングを活用している指定機関をおすすめします。
eラーニングを活用しているかどうかは募集要項に書いてあることがほとんどですので、こちらは必ずチェックしましょう。

3-5 共通科目と区分別科目の費用

eラーニングを活用している指定機関であれば、共通科目でおよそ300,000円~500,000円かかります。
これに加えて、ご自身の習得したい区分別科目の費用が加算されていきます。
1つの参考事例として、筑波大学附属病院の募集要項から、区分別科目ごとの費用一覧を載せておきます。

コース No
区分別科目:特定行為 受講料
(消費税込み)
1 呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 88,200円
2 栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連 25,200円
3 創傷管理関連 100,800円
4 創部ドレーン管理関連:創部ドレーンの抜去 21,000円
5 透析管理関連 39,200円
6 血糖コントロールに係る薬剤投与関連 50,400円
7 術後疼痛管理関連 29,400円
10 精神及び神経症状に係る薬剤投与関連 79,800円
11 動脈血液ガス分析関連 42,000円
12 腹腔ドレーン管理関連 29,400円
13 呼吸器(気道確保に係るもの)関連 30,800円
14 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 50,400円

※参照:筑波大学附属病院 看護師特定行為研修 受講者募集要項 第7期生募集用

3-6 受講費用には2つの助成金が対象となっている

3-6-1 教育訓練給付制度(一般教育訓練)

特定行為研修が修了した場合、研修生本人が指定機関に支払った教育訓練経費の20%相当額(上限10万円)が給付される制度です。
詳しくは、ハローワークのこちらのページをご覧ください。
ハローワーク:教育訓練給付制度

3-6-2 人材開発支援助成金(旧キャリア形成促進助成金)

事業主等に対して訓練経費や訓練中の賃金の一部を助成する制度です。
詳しくは、厚生労働省のこちらのページをご覧ください。
厚生労働省:人材開発支援助成金

4 まとめ

特定行為研修を修了した看護師は、2018年9月末時点でまだ1,205名です。保健師や助産師を含む看護師はいま日本に約160万人いますので、看護師全体の0.08%しかいません。
看護師キャリアを考えると希少価値があること、1度研修を修了してしまえば、更新手続きが不要であることなど、目指すメリットは大きいと思います。
また、資格要件が経験年数のみで、認定看護師や専門看護師と違い、働きながら修了できるという利点もあります。

看護師としてのキャリアアップを働きながら考えていきたいという方は、まずは特定行為研修を受講してはいかがでしょうか。