患者さんからの暴力は労災の対象?判断基準を徹底解説

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患者さんからの暴力は労災の対象?判断基準を徹底解説

患者さんから暴力や暴言を受けても「私たちは患者さんの理解と受容が大切だ」と考えたり、「患者さんは病気だからこうなってしまうのかもしれない」などと考え、自分を納得させようとしたことはありませんか?

また、諦めていませんか?

看護師だから暴力を受けていいなんてことは全くありません。

患者さんから暴力を受けたら、容認するのではなく、労働災害に値する可能性があると考え、認定を受けるために動きましょう。

なお、患者さんからの暴力は、身体的な暴力と言葉の暴力の2つがあります。
患者からの暴力 区分
今回は患者さんからの身体的暴力と言葉の暴力について、どういった場合に労災と認定され、どういった場合に労災と認定されないのか、その判断基準を詳しく解説していきます。

1 患者さんからの暴力によるケガはほとんどが労災認定される

医療現場で看護師が患者さんからの暴力を受けケガを負った場合は、ほんどが労災認定されます。

看護師が行う看護ケアでは、清拭や排泄介助、入浴介助など、患者さんのパーソナルスペースに入り、直接肌に触れて行うため、看護師と患者さんは物質的・心理的にも距離が近くなってしまう傾向にあります。

また、患者さんのプライバシーの保護のために、処置やケアは個室などの仕切られた空間で行われます。

こういった看護師特有の業務背景が、患者さんからの暴力を受けてしまう状況を生んでしまうのです。

特に、病気や入院によって強いストレスを受けた患者さんや認知症がある患者さん、精神障害のある患者さんなどで看護師を自分より下の立場だと判断した時、暴力という態度でぶつけてしまう傾向にあるといえます。(参照:北海道医報 院内暴力への対応

1-1 具体的な労災認定に繋がる暴力の被害とは

看護ケアや処置の場面で患者さんからの暴力を受けてしまうケースでは、具体的にケア中の看護師を叩く・殴る、腕や脚に噛みつく、唾を飛ばす、ひっかくなどがあります。

こういった時、ケア中の看護師は無防備な体勢であったり、患者さんの暴力から逃れるより、患者さんの安全を守ることが必要なため、抵抗せずに直接ケガや被害を追ってしまう状況にあります。

これらが外傷に至る場合、勤務中にケガなどの障害を負ってしまったと判断され、労災認定されるでしょう。

男性患者さんや若い患者さんであれば力が強いので、受ける衝撃も大きいでしょう。

女性患者さんでも、抵抗することに必死になっている時などは、見境なく攻撃をしてくることもあります。

看護師の身体への直接のケガにはつながらない被害としては、脅迫や暴言があります。これには、患者さんからのセクシャルハラスメントなども含まれます。_

例えば、患者さんからの度を越えた過大な要求や身体的なことを幾度となく言ってくるセクハラ、嫌がらせなどがあります。興奮した患者さんの中には「ばか野郎」「殺すぞ」などと、恐ろしい暴言を投げつけてくるような患者さんもいます。

こういった患者さんからの言葉や態度での暴力で、看護師は精神的に大きな負担を受けます。このような精神的な障害を受けた場合の労災認定の流れについては、後述の「精神障害の場合」で説明していきます。

1-2 その他の判断が難しい場合の判断基準

労災にあたるか否は、業務災害と言えるか否かにかかっています。

業務災害は、業務遂行性業務起因性が認められることが業務災害と言えるか否かの基準です。それぞれの具体的な判断基準は下図の通りです。
業務災害
(参照:FPS-net 労災保険 業務災害とは

なお、労災保険の給付は、労働基準監督署長が支給・不支給の決定を行いますので、労災として認められるかどうかは事業主である病院が決めるわけではありません。

病院の事務が労災の対象だろうと言ったとしても、その後、労働基準監督所に申請した結果、対象ではないという結論となることもあります。

2 言葉の暴力は労災認定が難しい

身体的暴力とは逆に、患者さんから受ける言葉の暴力による精神障害は、労災認定されるのが難しいです。

ここからは、患者さんからの暴力・暴言などにより看護師が精神障害を受けた場合、労災認定はどうなるのかについて認定フローチャートとともに説明します。

精神障害の労災認定のフローチャートには、勤務中に精神障害を発症した場合の労災認定までの流れが記載されています。
精神障害の労災認定フローチャート
(引用:社会保険労務士飯田事務所 精神疾患(うつ等)での労災認定基準につきまして

精神障害は、外部からのストレス(仕事や日常生活の中で受けるストレス)と個人的に持つストレス対応力との関係で発病に至ると考えられています。

労災認定を受けるためには、発病が仕事による強いストレスが原因であると認定される必要があります。

2-1 認定基準の対象となる精神障害とは

認定基準の対象となる精神障害は、ICD-10の第5章「精神および行動の障害」分類に挙げられる障害のうち、認知症やアルコールや薬物による傷害などは除かれたものになります。(参照:厚生労働省 精神障害の 労災認定

その中で、業務に関連して発病する可能性のある精神障害の代表的なものには、気分(感情)障害に分類される「うつ病」や神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害に分類される「急性ストレス反応」などです。

2-2 業務による心理的負荷の評価とは

認定基準となる対象の精神障害を発症していた場合、業務による心理的負荷がどの程度あったかが評価されます。

労災認定要件には、この「業務による強い心理的負荷」が精神障害の発病前おおむね6か月の間に認められることとされています。(参照:厚生労働省 精神障害の 労災認定

ここでの評価は『強』にならないと、労災認定されないことになります。心理的負荷は目には見えないものですので、客観的証拠を準備することが重要となります。例えば、以下を準備するよう心がけましょう。

  • 患者さんからのモラハラ・セクハラ発言の録音
  • 上司・同僚からの供述書

また、記録を残していても『強』の判定基準は厳しく、具体的な『強』にあたる場合の例としては、

  • 生死にかかわる極度の苦痛を伴う場合
  • 労働不能となるほどの後遺症を残すような場合
  • 本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントを受けた場合

などが挙げられています。そのため、客観的証拠集めは大変重要になります。

2-3 業務以外の心理的負荷による発病かどうかもみられる

業務による心理的負荷が『強』だった場合は、次に業務以外の心理的負荷の状況はどうであるかが評価されます。

この業務以外の心理的負荷はⅠ~Ⅲ段階に負荷の強度が分けられており、強度がⅢでなくても個体側に発病の要因がなければ、労災認定となります。

逆に、業務以外の心理的負荷がⅢであっても、精神障害の既往歴やアルコール依存などの個体要因がある場合は、判断によっては労災認定されない場合もあります。(参照:厚生労働省 精神障害の 労災認定

このように、患者さんの暴力・暴言が原因で精神障害を発病した場合は、業務上でどのくらいの負荷がかかったかの内容と発病に対する個人的要因の関連性の相互を評価し、判断の方向が決まっていくといえます。

3 労働保険についてのQ&A

看護師は患者さんの暴力・暴言によって被害を受けた場合、労災が認定されることについてお話してきました。

その他、労災保険を受ける場合の気になる内容と、労災が認定されないケースでの注意点などをみていきましょう。

3-1 通院費も支給されるのか

労災認定を受けた場合、ケガや病気などの通院費は、以下の要件を満たすことによって支給されます。

支給される通院費の範囲

原則、労働者の居住地または勤務地から片道2㎞を超える通院で、かつ、下記の場合。
①同一市町村の診療に適した労災指定医療機関へ通院した場合
②同一市町村の診療に適した労災指定医療機関がないため、隣接する市町村内の診療に適した労災指定医療機関へ通院した場合
③同一市町村及び隣接する市町村内に診療に適した労災指定医療機関がないため、それらの市町村を越えた最寄りの労災指定医療機関へ通院した場合

補償の内容は、通院に要した費用の実費相当額が支給されることとなっています。(引用元:厚生労働省 通院費も支給されるのでしょうか。

3-2 療養費はいつまでもらえるのか

労災と認定されれば、療養費は傷病が治癒(症状固定)するまで補償されます。

治癒とは、傷病の症状が安定し医学上一般に認められた医療を行っても医療効果が期待できなくなった状態をいいます。

しかし、障害にはあらゆる症状があるため、治癒の限界も異なってきます。(参照:厚生労働省 療養費はいつまでもらえるのですか。

3-3 休業補償はいつまでもらえるのか

労災を受けるまでの障害を受けた場合、仕事を休業せざるを得ないこともあります。

その時は以下の要件を満たすかを確認する必要があります。

休業補償の要件

①業務上の事由又は通勤による負傷や疾病による療養のため
②労働することができないため
③賃金を受けていない

これらの要件を満たす限り、休業4日目から期間中は休業補償が支給されます。(引用元:厚生労働省 休業(補償)給付はいつまでもらえるのですか。

3-4 労災認定が受けられないケースと労災認定に不服がある場合の注意点

前述したように、労災とは「業務中に、業務によって起こったケガや病気」に対する保障であるため「仕事中に起きた」という事実だけでは、労災と認定するには不十分となるのです。

仕事中にケガや病気をした場合でも、それが業務によるもの(業務遂行性や業務起因性)ではなく、勤務中であっても私的行為が原因の災害や、個人的な恨みなどで第三者から危害を加えられた場合などは、労災が認められません。

労災認定された場合でも、その認定内容に不服がある時は労働局に審査請求をすることもできます。

しかし、審査請求は、労働保険給付の決定があったことを知った翌日から起算して3か月を経過した時はすることができないので、注意が必要です。(参照:仕事中の怪我・病気で労災がおりない!まず被災者が確認すべきこと

4 まとめ

看護師が患者さんから暴力などの被害があった場合は労災を受けることができます。

しかし看護師という職業柄、患者さんから叩かれたり、暴言を吐かれることは仕方ないことだと諦めていることが多いのが現状です。

命を守る医療現場の中で、看護師でも一人の人間として自分の身体や精神をいたわることは大切です。

一度自分たちの職場の勤務風景を思い出して、患者さんから受けた暴力や心が傷ついた暴言、言われてゾクッとしたセクハラ発言など、見過ごしてきた状況はなかったか振り返ってみてください。

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